只今、クラウド基盤「Google App Engine(以下、GAE)」の連載しています。
現在はGAE界最大の敵である「スピンアップ」のシリーズです。
本日はスピンアップ編の最終章、Ajax作戦についてです。
重いものは重い
さて、前回のおさらいからですが、GAEのスピンアップは重いものです。限界までチューニングした所で数秒、現実的には7~8秒は必要とすると見込んで良いでしょう。
つまり、
- 最初に表示した時、画面が10秒近くホワイトアウトしている。
こういう現象に陥ってしまうわけです。
今回はこの現象に対する対抗策に関する内容です。
我慢作戦
まあ、「スピンアップ」というのはインスタンスが起動する時だけ重いものですから、最初の一回だけ我慢すれば、後は速いものですよ。
私は過去に負荷テストを行っていますが、
その時の実績によると、20~25人がF5アタックしているような状態でも1インスタンスで捌けてしまいます。
つまり、普通の人が普通にアクセスするペースだと、その10~20倍の250~500人程度は、スピンアップが最初の1回以外は発生しない見込みになります。
何が言いたいかと言いますと、
- ホワイトアウトなんて滅多に起きないんだから我慢しろ。
というスタンスも十分アリってことですよ。
2回目にアクセスした時は速くなっているわけですから、ネット回線の一時的な不調と切り分け出来ないレベルだと思います。
しかし、我慢作戦では元も子もありませんから、真面目に技術的対処方法をご紹介します。
それは、Ajaxを使用することです。
Ajax作戦のカラクリ
GAEのスピンアップ問題から逃れることは出来ません。そこでAjaxが活躍するのです。
- 先にHTMLファイルや画像などの静的コンテンツを表示する。
- 表示直後、OnLoadでAjax起動。くるくるダイアログを表示しつつ、非同期通信で動的コンテンツを取得。
- Ajaxにより動的コンテンツを表示。
この三段構えで表示することで、体感的に速く表示されるようになります。
1.静的コンテンツ表示
実はですね、GAEというのは、「Javaファイルが置かれているサーバ」と「HTMLや画像など静的ファイルが置かれているサーバ」は別々なのです。そして、スピンアップが発生するのはJavaが置かれているサーバのみ。
HTML、CSS、JS、画像ファイルなど、静的ファイルの表示だけであればスピンアップは発生しないのです。
よって、①は常に超高速で表示されます。
これがAjax作戦の最大の秘訣です。
2.非同期通信
Ajaxの非同期通信によって、Javaにアクセスして内容を動的に表示します。ここでスピンアップが起きるので、くるくるダイアログが10秒近く表示されていることになります。
つまり、トータルで待たされている時間は全く変わらないわけです。
ただ、①の時点で枠組み部分は表示済みになっており、処理中を意味する「くるくるダイアログ」も表示されていますので、
ホワイトアウト状態と比較すれば、待たされている人のストレスがは劇的に軽減されます。
3.描画処理
バックエンドの非同期通信でデータを取得しましたら、画面に出力します。これにて画面が無事に表示出来ました。
これがGAE界で主流になっているAjax戦術の概要です。
Ajaxスキル必須
はい、ここでお分かりになられたかと思います。
Ajax作戦では、初期表示の際には静的ファイルであるHTMLを使用して表示します。
よって、jspは使用出来ません。
システム全体がAjaxに完全対応しなければならないのです。
上記には「我慢作戦という選択肢もある」と書きましたが、実際の所、GAE界ではこのAjax作戦が支配的なシェアを持っています。
GAE開発では、Ajax作戦が最適解であると言い切ってしまって良いでしょう。
つまり、開発者には「Javaスキル」と「Ajaxスキル」の両方が求められるわけです。
- GAE開発は、JavaとAjaxの両方のスキルを持っていることが必須!!
プルダウンの中身を差し替えるだけみたいな粗末なAjaxではありません。
画面全体がAjax状態。
技術者はフルAjaxを実現するスキルを持っていなければなりません。
私はこの、「技術者の要求するスキルハードルの高さ」がGAE最大のネックだと思っています。
JavaとAjax、両方に精通している技術者というのは中々いません。
一般に、Javaというのは業務用アプリで多く使われる傾向にあります。
業務用アプリではAjaxは出番が少ないのです。
逆にAjaxが多く使用されるのはエンドユーザ向けシステム、例えばSNS辺りでしょうが、ああいうのはサイクルの速いスクリプト言語で書かれている事が常です。
つまり、GAE開発に必要とする「Java」と「Ajax」を両方揃えている技術者というのはレアケースということになります。
一応、「Android + HTML5のハイブリッドアプリ」の開発経験者なら期待出来る所ですが、それも技術者全体から見れば少数派でしょうし……。
「Java × Ajax」、これは意外にレアなのです。
終わりに
GAE最大の問題である「スピンアップ」について検証を重ねるうちに、徐々にGAEの癖というものが分かってきましたね。
GAEは、普通のJavaWebシステム開発とは明らかに違う点が、確かにあります。
この為、GAE開発を行っている会社というのは、GAE専門特化型になっているケースが多いように見受けられますね。
スペシャリスト型でなければキツいのでしょう。
そんな、気軽に使うにはちょっとハードルの高いGAEですが、
次回はそれの有効活用法について検討したいと思います。
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